アスベストに関する違反事例は数多く報告されていますが、その全てが悪質で意図的に違反行為を行ったものではありません。
違反事例の中には、正しく対応しているつもりでも、実は間違った認識をしているがために違反行為となってしまった事例もあります。認識の違いにかかわらず、違反行為をした場合には罰則対象となるので注意が必要です。
そこで今回の記事では、アスベストの事前調査を行う上で、よくある失敗事例を5つの注意点でわかりやすく解説します。
法改正でアスベスト事前調査報告が義務化
大気汚染防止により、工事規模にかかわらず建築物の解体、改修工事を行う際には、アスベストの事前調査の実施が義務化されていますが、一定規模以上の工事の場合には「都道府県」や「労働基準監督署」に調査結果の届出を行う必要があります。
事前調査報告書の作成方法や届出についての失敗事例も多く報告されているため、正しい手順で進める必要があります。
アスベスト事前調査のよくある失敗事例5選
アスベストに関する業務の中でも、特にミスが多いのが「事前調査」の業務です。同じようなミスをする方が多いので、ここでは、アスベストの事前調査に関するよくある失敗事例5選について解説します。
失敗事例1:調査報告書の記入ミス
一定規模以上の工事の場合は、アスベストの事前調査を行うだけでなく、調査結果の報告も義務化されていると解説しました。この調査報告書を作成する際に、多くのミスが発生しています。
例えば「新築工事の着工日」を記載する箇所は、対象となる建築物の建設工事が始まった当時の日付を書く必要があります。
しかし、この欄に解体や改修工事に着工する日付や解体工事後の跡地で行われる新築工事の日付が書かれるミスが発生しています。
建設工事が行われた時期が古すぎて情報が残っていないという場合も多くありますが、その際には建設時期は「不明」にチェックを入れて、工事の概要欄におおよその建設時期を記載します。
※情報参照:アスベスト調査結果報告に関する注意点について(足立区)
https://www.city.adachi.tokyo.jp/kankyo-hozen/asbhokoku_chui.html
失敗事例2:みなし判定を行い調査報告を怠った
アスベストの「みなし判定」とは、アスベストが含有されているとみなすことを意味します。そのため、一定規模以上の工事の場合は、アスベストの事前調査報告の対象となりますので、届出を正しく行う必要があります。当然、飛散防止措置も正しく実施しなければなりません。
みなし判定に関してよくある失敗として、設計図や記録による書面調査や分析結果がないにもかかわらず「アスベスト非含有」とみなして良いと勘違いしている事例です。
これは全くの間違いですので、注意しましょう。
失敗事例3:発注者が事前調査をしていたので元請け業者が調査を怠った
古い建築物の場合は、何度も改修工事が行われている可能性があり、発注者である建築物の所有者や管理者が以前に行った事前調査の情報を持っている場合があります。
ここで、発注者が以前に事前調査を行ったからという理由で、解体や改修工事を行う元請け業者がアスベストの事前調査を怠った場合は、違反対象になります。
この理由は、アスベストの事前調査の責任は、発注者ではなく「元請け業者」にあるからです。
もし発注者が以前に事前調査を行っていたとしても、その情報を元に元請け業者が責任を持って書面調査を行い、アスベスト使用の有無を調べなければなりません。
失敗事例4:受注金額が100万円未満の小さい工事は事前調査は必要ない
アスベストの事前調査は、工事の受注金額にかかわらず、建築物の解体や改修工事を行う際には、必ず実施しなければなりません。
稀に受注金額が低ければ、対象外となると勘違いしている方がいるので注意してください。
失敗事例5:小規模な改修工事なら事前調査は必要ない
受注金額と同じく、工事規模が小規模の場合も事前調査が必要ないと勘違いしている方がいるので、注意が必要です。
仮に、ビスを打ち込むだけ、ビスを抜くだけ、という軽微な作業であっても、改修工事とみなされて事前調査の対象となります。
ただし、既存の塗装の上から新たに塗装を行うだけの作業の場合は、事前調査を行う必要なありません。
塗装業界におけるアスベストの注意点に関しては、以下の関連記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
アスベスト事前調査をしないとどうなる?罰則はある?
法律の世界では「知らなかった」という理由で許されることはありません。
アスベストの飛散防止のための隔離措置、工事計画届などの計画書の提出などを怠って解体や改修工事を行った場合には、直接罰として「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されます。
また、届出を行わずにアスベストの除去作業を違法に行った際には「3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。
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アスベストに関する業務は複雑な上に、法改正も頻繁に行われるため、専門業者でないと最新の法改正に基づく対応が難しくなっています。
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