アスベストは耐熱性や耐火性、絶縁性に優れた「優秀な建築資材」として1970〜1990年代を中心に、日本でも広く使われてきましたが、2006年に新たな使用が禁止されました。
この背景には、アスベストが原因となる多くの健康被害があり、同じ過ちを繰り返さないために、建築物の解体や改修を行う際には事前調査が義務化されています。
そこで今回の記事では、アスベストの事前調査や飛散防止措置を怠った違反事例をご紹介します。
法改正によりアスベストの事前調査報告が義務化
アスベストが使用された建材を安全に処理するために、いかなる建築物の解体、改修工事においても、事前調査が義務化されています。
さらに、一定以上の規模の工事の場合は、都道府県と労働基準監督署への調査結果の届出も義務となっています。
アスベストの事前調査や飛散防止対策を怠ったことによる違反事例7選
アスベストに関する法律は厳しく、違反した際には罰則もあります。ここでは、実際にアスベストの事前調査や飛散防止対策を怠った違反事例を7種類ご紹介します。
違反事例1:事前調査をせずに解体工事を行った(大阪府/令和4年)
建築物の解体工事を行う際に、アスベストの事前調査を行わずに解体工事を実施したとして、大阪府の解体工事会社が書類送検されました。
設計図がない建築物だったにもかかわらず目視調査を行わずに、少なくとも1名の作業員に解体作業を行わせた疑いがかかっています。
違反事例2:飛散防止措置を行わずに耐震補強工事を実施(東京都/平成28年)
改修対象のビルにアスベストが使用されていると知りながらも、飛散防止対策をせずに耐震補強工事を実施したとして、東京都にある元請け会社の建設会社と施工業者が書類送検されました。
ビスを打ち込むだけ、ビスを抜くだけという軽微な作業でも改修工事と見なされて、事前調査や飛散防止措置の義務が発生するので、十分に注意してください。
違反事例3:事前調査を行わずにマンションの解体工事を実施(大阪府/平成28年)
事前調査を行わずにマンションの解体工事を実施したとして、大阪府の建設会社とその専務が書類送検されました。
この事例では、細かい情報は公開されていませんが、アスベストに関して事前調査や飛散防止処置の義務を「知らなかった」では済まされません。法律で定められている内容については、積極的に情報収集を行い、適切に対応する必要があります。
違反事例4:煙突のアスベスト除去工事中に飛散事故が発生(埼玉県/平成25年)
煙突内部で使用されているアスベストの除去作業中に、アスベストの使用箇所に亀裂が入り、基準値の約25倍のアスベストが煙突外に飛散しました。
アスベストの危険性を理解して飛散防止措置を施していたとしても、その措置が不十分だったということも考えられます。発注者側ができる対策としては、アスベストに関して正しい知識と実績を持った信頼できる業者を選定することです。
違反事例5:小学校を飛散防止措置なしで工事を行った(神奈川県/平成25年)
アスベストの飛散防止措置を行わずに、小学校内で解体工事を実施し、機械室にあった煙突からアスベストが流出した事例です。この事例では、700名以上がアスベストを吸引してしまいました。
違反事例6:地下鉄駅内でのアスベスト除去工事中に飛散事故が発生(愛知県/平成25年)
1日に6,000名規模が利用する愛知県内の地下鉄駅内の換気機械室で、アスベストの除去作業中にアスベストが暴露した事例です。
違反事例7:無届でアスベストの除去工事を行った(東京都/平成18年)
天井材としてアスベストレベル1に該当する吹き付け材が使われていたにもかかわらず、ビルの解体作業を無届で実施したとして、元請け会社と現場責任者、下請け業者が書類送検された事例です。
今回ご紹介したアスベストに関する違反事例は主に平成に起こった事例ですが、このような事例がおこあったことでアスベストに関する規制もどんどん厳しくなっています。
法律で義務化されたことに正しく対応することも大切ですが、本来はアスベストが作業員や周囲の住民に飛散しないことを大前提に考えるべきです。
アスベスト使用が疑われる建築物の解体や改修を行う際には、必ず事前調査を行い、飛散防止対策を徹底しましょう。
アスベストに関する罰則
アスベストに関する罰則は厳しく設定されています。
例えば、アスベストのレベル1(吹付け材)、レベル2(保温材、耐火材など)、レベル3(成形版)の除去工事において、飛散防止のための隔離措置、工事計画届などの計画書の提出など「除去する工法ごとに定められた作業基準」を遵守しなかった場合は、直接罰として「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されます。
また、アスベストのレベル1、レベル2に関して、特定粉じん排出等作業など都道府県知事あての届出を怠ったにもかかわらず、アスベストの除去作業を実施した場合には「3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。
アスベストに関する罰則の対象範囲は、法改正により頻繁に変更になっているため、常に注意深く情報収集を行う必要があります。
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