建物の解体や改修を行う際、避けて通れないのがアスベスト(石綿)の事前調査です。2022年(令和4年)の法改正以降、建築物だけでなく「工作物」についても厳しい調査と報告の義務が課せられるようになりました。
しかし、現場でよく聞かれるのが「そもそも工作物とは何を指すのか?」「特定工作物と普通の工作物は何が違うのか?」という疑問です。これらを正しく理解していないと、無自覚な法令違反を招き、工事の中断や罰則の対象となるリスクがあります。
今回の記事では、「アスベスト」「特定工作物」「工作物とは」というキーワードを軸に、石綿法令における定義や具体的な設備の種類、報告が必要な規模要件について詳しく解説します。
アスベスト調査における「工作物」とは何か?

まず整理すべきは、法律上の「工作物」の定義です。建築基準法や大気汚染防止法において、工作物とは「土地に定着する人工物のうち、建築物(屋根と柱・壁があるもの)以外のもの」を指します。
具体的には、煙突、塔、擁壁、トンネル、橋梁、さらには工場内の大型機械設備や配管などがこれに該当します。アスベストはかつて、その耐熱性や絶縁性の高さから、こうした工作物の断熱材やパッキン、塗装材として大量に使用されていました。
「特定工作物」とは?具体的な17種類

石綿障害予防規則(石綿則)において、特にアスベストが使用されている可能性が高く、解体・改修時に慎重な調査が求められるものとして厚生労働大臣が定めたものが「特定工作物」です。
現在、以下の17種類が「特定工作物」として指定されています。
・反応槽: 化学プラントなどの反応釜
・加熱炉: 工業用の加熱設備
・ボイラー及び圧力容器: 断熱材やパッキンに石綿の可能性
・配管設備: 建築設備(給排水等)を除く工業用配管
・焼却設備: ごみ焼却炉など。耐火材に石綿が多用された
・煙突: 建築設備を除くもの。内部の断熱材に注意
・貯蔵設備: タンク類(穀物用を除く)
・発電設備: 火力発電所などの大型設備(太陽光・風力を除く)
・変電設備: トランスや遮断機など
・配電設備: 制御盤や配電盤
・送電設備: 鉄塔や送電ケーブル
・トンネルの天井板: 防火用の成形板
・プラットホームの上家: 鉄道駅のホーム屋根
・遮音壁: 高速道路などの防音パネル
・軽量盛土保護パネル: 道路建設時の保護材
・鉄道の駅の地下式構造部分の壁及び天井板
・観光用エレベーターの昇降路の囲い: 展望用などのシースルー構造
これらの設備を解体・改修する場合、アスベストの事前調査だけでなく、一定規模以上であれば行政への電子報告が義務付けられています。
「特定工作物」以外の工作物は調査不要なのか?
ここで注意が必要なのが、上記17種類に含まれない「その他の工作物」の扱いです。
結論から言えば、17種類の特定工作物に含まれなくても、アスベストが含まれている可能性がある全ての工作物は「事前調査」の対象です。例えば、看板、遊具、フェンス、コンクリート電柱の補修材なども、アスベストを含んでいる可能性がある限り、工事前に有資格者による調査を行わなければなりません。
「特定工作物」は、あくまで「行政への報告義務が発生する対象」としての分類であり、調査義務自体はほぼ全ての工作物に課せられていると考えるのが正解です。
アスベスト事前調査の報告義務と規模要件
工作物の解体・改修工事において、行政(労働基準監督署および自治体)への報告が必要となるのは、以下の条件を満たす場合です。
・特定工作物(17種類)の解体・改修であること
・請負代金の合計が税込100万円以上であること
建築物と混在する場合の注意点
建築物(ビルや住宅)の解体と、工作物(キュービクルや外部配管など)の撤去をまとめて請け負う場合、「工事全体の請負金額が100万円以上」であれば、建築物・工作物それぞれの調査結果を報告する必要があります。
よくある見落としとして、「建物の解体は80㎡未満だから報告不要だと思ったが、工作物を含めた総額が100万円を超えていたため、報告漏れになってしまった」というケースがあります。コンプライアンス遵守のため、合算金額には細心の注意を払いましょう。
工作物におけるアスベストの見分け方とリスク箇所

工作物は建築物以上に、アスベストが「目に見えない場所」に使われていることが多いのが特徴です。
隠れたアスベストの例
ガスケット・パッキン
配管の接合部やフランジに挟まれているシール材。これらは石綿含有率が非常に高いものが多く、劣化して固着していると剥がす際に粉じんが飛散します。
断熱材・保温材
ボイラーや配管の外側に巻かれているもの。
防振塗料・下地材
エレベーターの籠の裏側や、金属パネルの裏面に結露防止や防音目的で塗布されています。
これらは目視だけでは判別が難しいため、設計図書の確認に加え、メーカーへの型番照会や、専門機関による分析調査が不可欠です。
特定工作物のアスベスト分析は「オルビー環境」へ

「これは特定工作物にあたるのか?」「このパッキンにアスベストは入っているのか?」という曖昧な判断は、現場の安全を脅かすだけでなく、企業としての社会的信用を失墜させるリスクを孕んでいます。特に工作物のアスベスト調査は、建築物とは異なる専門知識が求められます。
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