昭和から平成初期にかけて建てられた鉄筋コンクリート造のマンションにお住まいの方にとって、天井裏やパイプスペース(PS)で見かける「白っぽい配管」は、単なる排水管ではないかもしれません。特に「トミジ管」などの名称で知られる耐火二層管には、かつてアスベスト(石綿)が使用されていました。
「点検口の蓋が当たっただけで飛散するのか?」「ドアの開閉の振動で粉じんが舞うのではないか?」といった不安は、目に見えない有害物質だからこそ募るものです。
今回の記事では、トミジ管(耐火二層管)の構造や飛散リスク、日常生活での安全な接し方について、専門的な知見から徹底解説します。正しい知識を持つことで、過度な不安を解消し、適切な管理方法を学びましょう。
トミジ管(耐火二層管)とは?なぜアスベストが使われたのか

トミジ管とは、株式会社富路(現在のフネンアクロス株式会社)が開発した排水用耐火二層管の代表的な商品名です。この配管は、性質の異なる2つの素材を組み合わせた二重構造になっているのが最大の特徴です。
内部には、水をスムーズに流すための硬質ポリ塩化ビニル管が通っており、その周囲を「繊維モルタル」と呼ばれる耐火被覆層がしっかりと包み込んでいます。この外側のモルタル層が、火災時に熱による配管の溶け落ちを防いで延焼を食い止めると同時に、排水時のチョロチョロという流水音を吸収して抑える役割を果たしています。
アスベストが果たした役割
1974年の製造開始から2006年に全面的に禁止されるまで、外管の繊維モルタルを成形する際の「つなぎ(補強材)」としてアスベストが使用されていました。アスベストは耐火性に優れ、強固に建材を形作ることができるため、マンションのキッチンやトイレの雑排水管、汚物排水管として、騒音防止と防火の目的で広く採用されたのです。
アスベスト含有のトミジ管(耐火二層管)はどこに使われた?

アスベスト入りのトミジ管は、主に「耐火性」と「防音性」が必要な中高層マンションやビルに多用されました。
排水のメインライン(立管)
マンション各階を縦に貫く排水管です。上階の排水音を抑え、火災時の延焼を防ぐ目的で、パイプスペース(PS)内に設置されています。
天井裏の排水枝管(横引き管)
トイレやキッチンの天井裏を水平に通る配管です。下階への騒音対策や、防火区画を貫通する箇所の被覆材として重宝されました。
換気・排気用のダクト
厨房や浴室の排気ラインが壁や床を貫通する際、耐火被覆の代わりとしてスリーブ材に使用されるケースもありました。
アスベスト含有トミジ管の「飛散リスク」とは?
最も気になるのが、「触れたり、何かがぶつかったりしただけでアスベストが飛散するのか」という点です。
アスベストレベル3(非飛散性建材)の性質
トミジ管に含まれるアスベストは、セメント(モルタル)でカチカチに固められた状態です。これは法令上で「レベル3(非飛散性建材)」に分類されます。
通常の接触
指で触れたり、木製の蓋板が軽く擦れたりする程度で、目に見えるほどの粉じんが舞うことはまずありません。
振動の影響
ドアの開閉による空気圧や振動で、配管の表面からアスベストが剥がれ落ち、室内に充満するというリスクも、建材が著しく劣化(ボロボロに崩落)していない限り、現実的には極めて低いと考えられます。
注意が必要な「破壊」と「加工」
ただし、以下のような強い衝撃や加工が加わる場合は、話が変わります。
電動工具での切断
リフォーム等でサンダーなどを使って切断すると、大量の粉じんが発生します。
強い衝撃による破砕
重いものが激しく衝突し、モルタル層が粉々に砕けた場合は、その断面から繊維が露出・飛散する可能性があります。
リフォームや大規模修繕時のリスク管理

日常生活では非常に安定しており安全なトミジ管ですが、いざ「工事」や「売却」という場面を迎えると、所有者が無視できない法的リスクとコストの問題が表面化します。将来のトラブルを避けるために知っておくべきポイントを解説します。
リスク管理1:リフォーム時の「アスベスト事前調査」の義務化
2022年の法改正により、マンションのユニットバス交換やトイレの改修など、建材を解体・切断する可能性があるすべての工事において、着工前の「アスベスト事前調査」が義務付けられました。
たとえ小さな内装リフォームであっても、配管が隠れている天井裏や壁を壊す場合は、有資格者による調査とその結果の行政報告が欠かせません。
リスク管理2:撤去・処分に伴う工事費用の増大
トミジ管の撤去が必要になった場合、通常の塩化ビニル管(塩ビ管)の撤去と比較して、工事の見積もり額は高くなる傾向にあります。
これは、トミジ管が「石綿含有廃棄物」に該当するためです。作業時にはアスベスト繊維が舞わないよう、水を撒いて湿らせる「湿潤化処理」が必要になり、撤去した配管も一般のゴミとして捨てることはできません。
専用の袋で二重梱包し、許可を受けた処分場へ搬入するための特別な運搬・処分費用が上乗せされるため、事前の資金計画には注意が必要です。
リスク管理3:不動産売却時の「重要事項説明」と告知義務
マンションを売却する際、売主には「アスベスト使用調査の有無」を買主へ告知する義務があります。トミジ管の使用が明らかな場合は、その事実を正確に伝えなければなりません。
もしトミジ管の存在を隠したり、調査を怠ったまま売却したりした場合、引き渡し後に買主がリフォームを行い、そこでアスベストが発覚すると「契約不適合責任」を問われる恐れがあります。
除去費用の損害賠償請求や契約解除などの深刻なトラブルに発展する可能性があるため、売却前に専門家による判定を受けておくことが、結果として売主自身の身を守ることにつながります。
「トミジ管」と「通常の塩ビ管」を見分けるポイント

天井裏やパイプスペースを覗いた際、目に入る配管が「アスベストを含むトミジ管」なのか「一般的な塩ビ管」なのかを判断することは、リスク管理の第一歩です。これらを見分けるための代表的な外観の特徴を解説します。
ポイント1:表面の質感と色味
通常の塩ビ管は、プラスチック特有のツルツルとした質感で、色は灰色(VP管)や濃い灰色であることがほとんどです。一方、トミジ管などの耐火二層管は、塩ビ管の外側を「繊維モルタル」で覆っているため、表面が白っぽく、コンクリートのように少しザラザラとした質感をしているのが大きな特徴です。
ポイント2:配管の厚みと打音の違い
二重構造であるトミジ管は、通常の塩ビ管に比べて一回り以上厚みがあります。また、指の関節で軽く叩いた際、塩ビ管は「コンコン」という高い音が響きますが、トミジ管はモルタル層が音を吸収するため「ペチペチ」「ボコボコ」といった鈍く低い音がします。
ポイント3:刻印や印字の確認
配管の表面をよく観察すると、メーカー名や製品名が印字されていることがあります。「トミジ」「フネン」「耐火二層管」といった文字や、消防評定マークが確認できれば、アスベスト含有の可能性がある建材だと判断できます。
ただし、1990年代以降に製造された「ノンアスベストタイプ」の耐火二層管も見た目は酷似しており、目視だけでアスベストの有無を完全に判別することは不可能です。最終的な「有り・無し」の確定診断には、専門機関による分析調査が欠かせません。
トミジ管(耐火二層管)のアスベスト分析は「オルビー環境」へ

「トミジ管=アスベスト=即危険」という図式は、現在の科学的・法的な見解では正しくありません。セメントで固められたトミジ管は、壊さない限りはあなたの生活を脅かすものではないのです。
しかし、「天井裏のあの配管はトミジ管なのか?」「もし工事をすることになったら、どれくらいのリスクがあるのか?」 こうした不安を解消し、将来的なリフォームや売却をスムーズに進めるためには、専門家による正確な分析が不可欠です。
オルビー環境は、関西(大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山)を中心に、日本全国で耐火二層管を含む建材のアスベスト分析をサポートしています。アスベスト分析の実績は全国で年間10,000件を超えており、最短1営業日の迅速報告と1検体12,000円からの低価格により、急な工事や取引を停滞させず、スムーズな工事進行を実現します。
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