解体・改修工事に欠かせない「アスベスト掲示板」の役割
建物の解体や改修工事の現場で見かける「アスベスト調査結果」の看板。実はこれ、単なる案内板ではなく、法律によって設置が厳格に義務付けられているものだということをご存知でしょうか?
2021年の大気汚染防止法および石綿障害予防規則の改正により、掲示ルールはさらに厳格化されました。万が一、看板の設置を怠ったり、内容が不適切だったりすると、行政指導や立ち入り調査の対象となるだけでなく、業者としての信頼を大きく損なうことになります。
今回の記事では、アスベスト事前調査に関する看板の正しい見方、設置場所のルール、そして法的根拠までを詳しく解説します。
アスベストの掲示看板とは?設置が必要な理由

アスベスト(石綿)が含まれる建材の解体・改修工事を行う際、周囲に粉じんが飛散するリスクを最小限に抑えなければなりません。そのため、工事の受注者(元請業者)や自主施工者は、事前にアスベストの有無を調査し、その結果を近隣住民や作業員に知らせる義務があります。
看板を設置する主な目的
公衆への情報公開
近隣住民や通行人に対し、工事の安全性やアスベストの有無を明確にする。
作業員の安全確保
現場で働く労働者が、どこにどのようなアスベストがあるかを把握し、適切な防護措置を講じられるようにする。
法令遵守(コンプライアンス)
行政による立ち入り調査時、調査が適正に行われているかを確認する指標となる。
アスベスト看板の正しい見方とは?3つのポイント

看板には決まった様式はありませんが、法律で盛り込むべき項目が定められています。以下の3つのポイントで確認を進めましょう。
ポイント1:調査方法の確認
アスベストが「有り」か「無し」か、どのように判断したかが記載されています。
書面による確認
設計図書(竣工図など)で建材の品名を特定し、メーカーのデータベース等で判断。
目視による確認
専門家が現地の建材を直接確認し、形状や質感から判断。
分析による確認
建材のサンプルを採取し、顕微鏡などを用いて科学的に分析。
ポイント2:調査結果の「みなし」に注意
結果欄に「有り」「無し」のほか、「みなし」という表記がある場合があります。これは、「分析はしていないが、年代等からアスベストが含まれていると仮定して、最も安全な方法で除去作業を行う」という意味です。「有り」と同様の厳しい作業基準が適用されます。
ポイント3:特定建築材料(アスベスト)の種類とレベル
アスベストはその飛散リスクに応じてレベル1〜3に分類されます。
レベル1(吹付け石綿)
最も危険度が高い。作業場を完全に隔離し、集じん・排気装置の設置が必須。
レベル2(保温材・断熱材など)
配管のエルボ等。湿潤化(濡らす作業)を徹底して除去。
レベル3(成形板・仕上塗材)
スレートやカラーベスト、吹付けタイルなど。
アスベスト看板の設置場所とサイズのルール

アスベスト看板は「どこに貼っても良い」というわけではありません。看板には「公衆」と「作業員」の両方の視点が求められます。
どこに掲示すべきか?
公衆に見やすい位置
工事現場の外周フェンスや入り口など、近隣住民や通行人が立ち止まらずに確認できる場所。マンションの内装工事なら、建物のエントランスやエレベーター付近など、利用者の目に触れる場所が推奨されます。
作業員の見やすい位置
石綿取扱作業場の入り口や前室など、実際に作業を行う人が必ず目にする場所。
サイズの規定
2021年の法改正により、事前調査結果の掲示板は「A3サイズ(横420mm×縦297mm)以上」と規定されました。以前よりも大型の掲示が求められるようになっています。
掲示を怠った場合のリスクとは?立入調査の対象に?
実際、現場で看板が設置されていないことが原因で近隣からの通報が入ったり、行政の立ち入り調査を招いたりするケースが多発しています。
看板がないということは、「事前調査自体をしていないのではないか?」「不適切な工事をしているのではないか?」という疑念を生むきっかけになります。自治体によっては看板の設置有無を重点的にチェックしている地域もあり、指摘事項が重なると工事停止や罰則の対象となる恐れがあるため、注意が必要です。
看板設置の法的根拠(大気汚染防止法・石綿則)
看板の設置は、以下の法律によって裏付けられています。
大気汚染防止法 第18条の17
解体等工事の元請業者は、事前調査の結果を工事現場において公衆に見やすいように掲示しなければならないと定めています。
石綿障害予防規則 第8条・第34条
事業者は、解体等の作業を行う作業場において、事前調査結果や石綿曝露防止対策の実施内容を見やすい箇所に掲示する義務があります。
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掲示板に「アスベストなし」と記載するのは容易ですが、根拠が不十分であれば虚偽報告となり、深刻な法的トラブルを招きます。周囲の信頼と現場の安全を守るには、専門知識に基づく精緻な分析が欠かせません。
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