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2025.10.21
太陽光パネル

太陽光パネル廃棄の「積立制度」とは?いつから?金額は?企業が知るべき法的義務

急増する太陽光パネル廃棄問題と資金確保の重要性

2012年のFIT(固定価格買取)制度開始を契機に、日本国内では太陽光発電設備が爆発的に普及しました。しかし、導入から10年以上が経過した今、初期の設備が寿命を迎え始める「2040年問題」、すなわち大量廃棄の時代が目前に迫っています。この大量に排出される使用済み太陽光パネルを、環境汚染を引き起こすことなく、適切に処理するためには莫大な費用が必要です。

従来、廃棄費用の積み立ては事業者の「努力義務」とされていましたが、実際に資金準備を進めていた事業者は全体の2割以下に留まるという状況が明らかになりました。このままでは、費用不足から不法投棄が横行し、クリーンエネルギーが環境負荷の原因となるという最悪の事態が懸念されます。

こうした背景から、国は2022年7月、「太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度」を導入し、特定の事業者に対し、廃棄費用の積み立てを法的に義務化しました。今回の記事では、この積立制度の概要、対象、積立金額の計算方法、そして払い戻し条件までを徹底解説します。

太陽光パネル廃棄の「積立制度」とは?

太陽光パネルのリサイクル・適正処理

この制度は、2022年7月1日施行の法改正により導入され、太陽光発電設備を事業終了後に適正に廃棄するための処理費用を、売電収入から自動徴収し外部で管理する仕組みです。

従来の任意積立では資金不足が課題でしたが、本制度により、事業者の倒産時でも廃棄費用が確実に保全されます。これは、クリーンエネルギーの「負の側面」に対し、社会全体で責任を持ち、不法投棄リスクを排除するための重要な対策です。

太陽光パネル廃棄の「積立制度」が創設された3つの目的

太陽光パネルのリサイクル・適正処理

この積立制度が創設された背景には、以下の3つの重要な目的があります。

目的1:不法投棄の防止

太陽光パネルの適切な廃棄には多額の費用がかかります。資金準備ができていない事業者が、費用不足から使用済みパネルを不法投棄するリスクを回避するため、外部での費用確保を義務付けました。

目的2:有害物質の適正処理

太陽光パネルには、鉛やカドミウム、セレンなどの有害物質が含まれている可能性があります。これらが不法投棄や不適正処理によって環境中に流出することを防ぎ、土壌や水質汚染といった長期的な環境リスクを低減することが、制度の重要な目的の一つです。

目的3:積立状況の改善

以前は任意であった廃棄費用の積み立てがほとんど進んでいませんでした。2019年1月末時点の報告では、実際に積み立てを行っている事業者は全体の2割以下という状況が明らかになっています。この制度により、資金調達の不透明さを解消し、すべての対象事業者に確実な資金準備を促し、廃棄時における財源の安定化を図ります。

積立制度を理解する3つのポイント

太陽光パネルのリサイクル・適正処理

この積立制度が具体的にどのような設備に適用され、いつから積立が始まるのかを理解することは、事業者にとって非常に重要です。

ポイント1:対象設備

FIT(固定価格買取制度)またはFIP(フィード・イン・プレミアム)の認定を受けている、出力10kW以上の太陽光発電設備が積立制度の対象となります。主に事業用や産業用として導入された設備が該当し、一般家庭向けの10kW未満の小規模な太陽光発電設備は、現時点ではこの制度の対象外です。

ポイント2:積立開始時期

積立は、対象となる設備の買取期間(FIT/FIP期間)が終了する10年前から開始されます。例えば、20年間のFIT認定を受けている設備の場合、運転開始から11年目の時点から積立がスタートし、FIT売電終了日まで継続されます。これにより、廃棄が必要となる時期に確実に資金が確保されるよう設計されています。

ポイント3:管理主体

毎月の売電収入から積立金額が自動的に天引きされる「源泉徴収型」が採用されています。この積立金は、電力広域的運営推進機関(推進機関)によって一元的に管理されます。これにより、発電事業者の財務状況に左右されることなく、廃棄費用が確実に保全される仕組みとなっています。

積立金額の算出基準

積立金額は、FIT認定を受けた年度のFIT調達価格に基づいて定められた「解体等積立基準額」によって算出されます。

積立計算式

「解体等積立基準額(円/kWh)」×「毎月の売電電力量(kWh)」=「積立金額」

この基準額は、FIT認定年度によって異なり、一般的に初期(調達価格が高かった時期)に認定された設備ほど、1kWhあたりの積立基準額も高く設定される傾向があります。これにより、発電量が多い月にはより多くの資金が積み立てられ、将来の廃棄費用を効率的に確保する設計となっています。

積立方法の原則は「外部積立」と「内部積立」の2分類

太陽光パネルのリサイクル・適正処理

積立方法には、原則である「外部積立」と、一部の例外に適用される「内部積立」があります。

積立方法1:外部積立(原則)

これは、大半の事業者が対象となる積立方法です。買取事業者を通じて、毎月の売電収入から積立金額が自動的に源泉徴収され、電力広域的運営推進機関に預け入れられます。

この仕組みの最大の利点は、発電事業者の経営状況(倒産リスクなど)に左右されず、廃棄費用が確実に保全される点です。これにより、廃棄時に必要な資金が確実に準備され、不法投棄などのリスクが大幅に低減されます。

積立方法2:内部積立(例外)

出力が50kW以上の高圧発電所を運用する事業者で、かつ国の定める非常に厳格な条件(財務状況の健全性、積立基準額を超える金額の積み立て、積立状況の定期的公表、金融機関や会計士による定期的なチェックなど)を全て満たした場合に限り、例外的に事業者自身が資金を管理する「内部積立」が認められます。

内部積立は、資金を自社で運用できるメリットがある一方で、上記条件を満たせなくなった場合は外部積立へ移行する義務があります。これは、あくまで例外的な措置であり、資金の透明性と確実な保全が強く求められます。

積立金が払い戻しになるケースはあるの?

積み立てられた資金は、原則として廃棄費用に充てるまで引き出すことはできません。しかし、発電事業の継続が困難になったり、設備の規模に変更が生じたりするなど、特定の条件下では、積み立てた費用の一部または全額を払い戻すことが可能です。ここでは、その具体的なケースについて解説します。

FIT調達期間中に払い戻しになるケース

買取期間中に発電事業を途中で終了したり、設備を縮小したりする場合に、積立金が払い戻されることがあります。

発電事業を終了する場合

FIT期間中に発電事業を完全に終了し、基礎や架台を含む発電設備全体を解体・撤去した場合、解体完了の確認を受けることで、その時点までに電力広域的運営推進機関に積み立てられた解体等積立金の全額を受け取ることが可能です。

発電事業を縮小する場合

調達期間中に発電事業の一部を縮小し、太陽光パネルの一部を廃棄する場合も払い戻しの対象となります。ただし、「廃棄される太陽光パネルが、認定された出力の15%以上かつ50kW以上である」といった規模の要件を満たす必要があります。

払い戻される金額は、想定される積立総額のうち、廃棄する出力の割合に相当する額、または実際に廃棄に要した費用の額のいずれか少ない方が上限となります。

FIT調達期間終了後に払い戻しになるケース

買取期間が終了した後(いわゆる卒FIT後)も、設備の解体・撤去費用に充てる場合に積立金が払い戻されます。

発電事業を終了する場合

調達期間終了後に発電事業を完全に終了し、発電設備全体を解体・撤去した場合、解体完了の確認を受けることで、積み立てられた積立金の全額を受け取ることができます。

一部交換・縮小の場合

FIT制度で設置された当初の太陽光パネルの一部を廃棄または交換した場合が対象です。払い戻し額は、10年間で積み立てられた総額のうち、廃棄・交換した出力の割合に相当する額、または実際に要した費用の額のいずれか少ない方が上限となります。

ここでも「認定出力の15%以上かつ50kW以上」といった規模の条件が適用される場合があります。

すべての太陽光パネルを交換する場合

FIT終了後、設置当初の太陽光パネルをすべて新しいパネルに交換した場合、パネル交換が完了した時点で、電力広域的運営推進機関に積み立てられた解体等積立金の全額が払い戻されます。

太陽光パネルの積立制度は、未来への責任と安心

太陽光パネルのリサイクル・適正処理

「太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度」は、2040年問題とされる太陽光パネルの大量廃棄や不法投棄のリスクに対し、事業者が責任を果たすための重要な仕組みです。この制度により、これまで不透明だった積立状況が改善され、FIT認定事業者は廃棄費用を確実に確保できるようになります。

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