電力業界において「インバランス」という言葉は、事業の収益性を左右する極めて重要なキーワードです。しかし、その実態は複雑で、制度の仕組みや計算方法を正確に把握している担当者は多くありません。
2026年度、このインバランス制度は「算定インデックス価格の上限引き上げ」という大きな節目を迎えようとしています。電力小売事業者や発電事業者にとって、これは単なるルールの変更ではなく、管理の失敗が即座に経営危機へ直結するリスクの増大を意味します。
今回の記事では、インバランス制度の基礎から、制度改正の影響、そして2026年以降を生き抜くための最新の戦略までを徹底的に解説します。
インバランスとは?仕組みと目的をプロが解き明かす

電力市場における「インバランス」とは、一言で言えば「計画と実績のズレ」のことです。
日本の電力システムは、電気をつくる量(供給)と使う量(需要)を常に一致させなければならない「同時同量」という大原則に基づいています。もしこのバランスが崩れると、電気の周波数が乱れ、最悪の場合、広域停電(ブラックアウト)を引き起こしてしまいます。
インバランス制度のルール
インバランス制度(別名:計画値同時同量制度)とは、上記のような計画と実績のズレ(インバランス)が生じた際、その差分を一般送配電事業者が調整し、発生させた事業者と金銭的に精算を行うための仕組みです。
小売電気事業者は顧客が使う「需要計画」を、発電事業者は「発電計画」を、それぞれ30分単位のコマごとに作成し、事前に電力広域的運営推進機関(OCCTO)へ提出します。 この「計画」と、30分間での「実績」の間に生じた差分こそがインバランスです。
・不足インバランス: 供給が需要に足りない状態(一般送配電事業者が電力を補填)
・余剰インバランス: 供給が需要を超過した状態(一般送配電事業者が電力を引き取り)
インバランス料金とは?なぜ発生する?

このズレを最終的に調整するのは、各地域の「一般送配電事業者(大手電力の送配電部門)」です。調整にはコストがかかるため、差分を発生させた事業者に対してペナルティ、あるいは精算金として「インバランス料金」が請求(または支払い)されます。
インバランス料金は、その時々の「電気の真の価値」を反映するように設計されています。
現在の算定の仕組み
2022年度以降の制度では、一般送配電事業者が需給調整のために確保・稼働させた電源の「限界的なkWh価格」をベースに算出されます。これに加えて、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場や1時間前市場(当日市場)の価格、系統全体の過不足状況を示す「補正項(α・β)」などが考慮されます。
特に注意が必要なのが、電力需給が極めて厳しい状況で発動する「補正インバランス料金」です。予備率が低下するほど単価が跳ね上がり、事業者の利益を瞬時に吹き飛ばすほどのインパクトを持ちます。
再エネ普及による「0円」インバランス
太陽光発電などの再生可能エネルギーが急増した結果、昼間に電力が余りすぎる現象が起きています。九州エリアなどで「出力制御」が行われる時間帯には、系統全体で電気が余っているため、インバランス料金が「0円/kWh」に設定される特殊なルールも存在します。
2026年度の激震!インバランス上限価格が引き上がる?

今、電力事業者が最も警戒しているのが、2026年度から予定されている上限価格(C値・D値)の引き上げです。
なぜ上限が上がるのか?
これまでは、需給ひっ迫時でもインバランス料金が極端に高騰して事業者が倒産しないよう、暫定措置として上限が200円/kWhに抑えられてきました。しかし、この「キャップ」があることで、市場参加者が必死に需要を抑制したり(DR)、高い価格で電力を調達しようとするインセンティブが削がれているという批判がありました。
決定された新単価
電力・ガス取引監視等委員会の検討により、2026年4月から以下の変更が検討・実施されます。
・C値(広域予備率3%以下): 200円/kWh → 300円/kWh へ引き上げ
・D値(広域予備率8%以下): 45円/kWh → 50円/kWh へ引き上げ
この100円の差は、1,000kW(1MW)のインバランスを出している事業者にとって、30分間で5万円、1時間で10万円のコスト増を意味します。数日間にわたる寒波や猛暑が来れば、その損失額は数千万円規模に達する恐れがあります。
インバランスリスクを最小化する最新戦略

上限引き上げに対抗するためには、従来のような「勘」に頼った需給管理では不十分です。最新のリスク管理戦略が求められています。
戦略1:AIと機械学習による予測精度の極大化
需要予測は、気温や曜日だけでなく、人流データや過去の特異日データを統合して解析する必要があります。特に太陽光発電を抱えるアグリゲーターや発電事業者にとって、雲の動きや日射量の急変を予測できる高度なAIモデルの導入は、インバランス回避の必須装備となっています。
戦略2:バランシンググループ(BG)の活用と事業者間連携
単独でインバランスを管理するのではなく、複数の事業者で「バランシンググループ」を形成し、互いの過不足を相殺し合う手法です。グループ内の総量で「同時同量」を達成すれば、個別のズレは打ち消され、インバランス料金の支払いを大幅に抑制できます。
戦略3:調整力の確保とDR(デマンドレスポンス)の活用
インバランスが発生しそうな瞬間に、顧客に節電を依頼する(下げDR)、あるいは蓄電池から放電することで、リアルタイムに需給を一致させます。2026年の上限引き上げ後は、このDRによる回避行動がコストメリットの面で非常に大きくなります。
インバランスから経営を守る!強い事業者の見分け方とは?

小売電気事業者を乗り換える際、あるいはパートナーを選ぶ際、その事業者が「インバランスリスクに耐えられるか」を見極めることが重要です。
見分け方1:需給管理の体制
電力需要は天候や社会情勢で刻々と変動します。強い事業者は、AI予測に加え、専門トレーダーが365日24時間体制で市場を監視しています。実需給の1時間前まで粘り強く取引を行い、予測のズレを埋め続ける現場の運用力こそが、余計なコストを最小化する鍵となります。
見分け方2:電源構成の多様性
市場調達(JEPX)に100%依存する事業者は、価格高騰時にインバランス料金の直撃を受けます。自社発電所の保有や、他社との「相対契約」など、市場外の電源を確保しているかを確認してください。多様な電源ポートフォリオを持つことで、不測の事態でも安定した供給が可能になります。
見分け方3:資本力と経験
2021年の市場高騰のような危機を乗り越えた「生存実績」は重要な指標です。単なる資本金の額だけでなく、一時的なコスト急騰を飲み込める財務基盤があるか、過去の混乱期にいかに供給責任を果たしたか。その経験値こそが、需要家へのリスク転嫁を防ぐ信頼の証となります。
持続可能なエネルギー社会の「出口戦略」はオルビー環境へ

インバランス制度は電力の安定供給を支える不可欠な仕組みであり、2026年度の価格改定は事業者にさらなる管理責任を求めています。しかし、発電の効率化や同時同量を追求する一方で、忘れてはならないのが役目を終えた設備の「終わりの責任」です。
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