期限まであとわずか!その「PCB保管」危険かも!?
倉庫や事業所にある古い変圧器やコンデンサ。それがPCB廃棄物である場合、「鍵をかけて放置しているから大丈夫」という考えは非常に危険です。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物の保管は、単なる「片付け」ではなく、PCB特別措置法と廃棄物処理法に基づく厳格な「特別管理」が義務付けられています。特に期限が2027年3月31日に迫る低濃度PCB廃棄物においては、保管の不備が行政処分(改善命令)や刑事罰(懲役・罰金)に直結するリスクがあります。
今回の記事では、多くの事業者が陥りがちな「PCB保管で即アウトになる5つのNG例」を具体的に解説し、行政処分を確実に回避するための特別管理基準と実践的な対応策について徹底解説します。
PCB廃棄物とは?処理期限に要注意!

PCB廃棄物は、人体に多大なる悪影響があることから、法律で定められた期限(低濃度PCBは2027年3月31日)までに処理することが義務付けられています。この処理義務を果たすまでの間、事業者は「排出事業者」として、廃棄物処理法上の特別管理産業廃棄物保管基準を遵守した保管をしなければいけません。
もしこの保管基準に違反した場合、都道府県知事等から「期限を定めた必要な措置を講ずべき改善命令」が出され、この改善命令に違反すると、 廃棄物処理法に基づく改善命令に違反した場合、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。
この罰則リスクを回避するためには、次に解説する、自社の保管状況の「即アウト」ポイントを知ることから始めましょう。
知らないと危ない!PCB保管で「即アウト」になる5つのNG例

PCB廃棄物の保管基準は非常に具体的にルールが定められています。以下に、現場の不備として行政指導や改善命令の対象となりやすい、典型的なNG例を5つ挙げます。
NG例1:地面にそのまま直置き、周囲に囲いがない
【違反基準:飛散・流出・地下浸透の防止】
PCB廃棄物は、万が一の漏洩(液体の流出)を防ぐための万全な対策が必要です。
即アウトな状態
機器やドラム缶を土の上やひび割れたコンクリートの上に直接置き、周囲に堰や段差(囲い)がない状態。
なぜアウトか
地面が不浸透性(水や油を通さない)でない場合や、囲いがない場合、PCB油が漏れた際に地下浸透や場外への流出を引き起こす危険性があるためです。これは廃棄物処理法が最も厳しく禁じる行為の一つであり、漏洩防止のための囲いの設置が義務付けられています。
NG例2:文字がかすれたり、規定サイズに満たない「掲示板」
【違反基準:見やすい箇所への掲示】
保管場所の明確な表示は、第三者の接触防止と管理者への注意喚起のために不可欠です。
即アウトな状態
「危険物」とだけ書かれた小さな紙を貼っている。または、雨風で文字がかすれて読み取れない状態になっている。
なぜアウトか
掲示板は縦・横それぞれ60cm以上というサイズ規定があり、「特別管理産業廃棄物の保管場所である旨」「保管する廃棄物の種類(例:低濃度PCB廃棄物)」「管理者の氏名・連絡先」など、記載すべき情報が細かく定められています。サイズや情報不足は明確な基準違反です。
NG例3:直射日光が当たり、機器が熱を帯びている場所での保管
【違反基準:揮発防止及び高温にさらされないための措置】
PCBは揮発性(気化しやすい性質)を持つため、保管場所の温度管理が重要です。
即アウトな状態
窓際や屋上など、直射日光が常時当たる場所、またはボイラー室の近くなど高温になりやすい場所で保管している。
なぜアウトか
機器が高温にさらされると、筐体内のPCBが揮発しやすくなり、保管場所周辺の空気中に拡散するリスクが高まります。また、腐食を早める原因にもなり、安全な長期保管を妨げます。
NG例4:一般のゴミや資材と一緒に積まれた状態
【違反基準:他の物が混入するおそれのないように仕切りを設ける等の措置】
PCB廃棄物とそれ以外の廃棄物の混入は、汚染拡大のリスクに繋がります。
即アウトな状態
処理業者に渡す前の一般の産業廃棄物や、日常的に使う工具、資材などと同じスペースに仕切りなく置かれている。
なぜアウトか
廃棄物同士の接触や、誤ってPCB廃棄物を別の場所に移動させてしまうなどの管理ミスが発生しやすくなります。PCB廃棄物は、他の物に汚染されないよう、仕切りを設けて独立した区画で管理することが必須です。
NG例5:PCB機器の筐体に錆や腐食が進行している
【違反基準:PCB廃棄物の腐食の防止のために必要な措置】
保管期間が長期化するにつれて、機器の劣化が進み、漏洩リスクが高まります。
即アウトな状態
トランスやコンデンサの金属製筐体に目立つ錆(さび)が発生し、塗装が剥がれて腐食が進行している。
なぜアウトか
腐食は、機器の強度を低下させ、内部のPCB油が外部へ漏れ出す直接的な原因となります。漏洩が発生した時点で、環境への影響と罰則リスクは飛躍的に増大します。
行政処分を回避!知っておくべき「特別管理基準」3つのルール

行政処分を回避し、2027年3月31日までに確実に処理を完了させるためには、上記NG例を解消し、以下の「保管ルール」を実践する必要があります。PCB廃棄物保管基準の要点は、「飛散・流出を防ぎ、安全に隔離・管理する」ことに集約されます。1つずつ詳しく見ていきましょう。
ルール1:物理的な保管環境の構築
PCB廃棄物を安全に保管するには、油の漏洩や揮発を防ぐ構造が不可欠です。
まず、床面は油が染み込まないコンクリートなどの不浸透性とし、万が一機器から油が漏れた場合に外部へ流出しないよう、周囲に堰(せき)やドレンパン(油受け)を必ず設置しなければなりません。
PCBは高温で揮発するリスクがあるため、保管場所は直射日光や高温を避け、屋内で換気を適切に行う必要があります。長期保管による腐食は漏洩の直接的な原因となるため、機器のサビ止め塗装を定期的にチェックし、湿気のない場所で保管することが求められます。
さらに、ネズミや害虫の発生は、配線を損傷させて漏洩を引き起こす可能性があるため、清潔な状態を維持しなければなりません。
ルール2:法定の表示義務と隔離措置
現場での管理を徹底するため、法定の表示義務と隔離措置も重要です。
保管場所は、関係者以外の立ち入りを防ぐための明確な囲いを設けるとともに、外部から見やすい箇所に、縦横それぞれ60cm以上の規定サイズを満たした掲示板を設置する必要があります。この掲示板には、「特別管理産業廃棄物の保管場所である旨」や「管理者の氏名・連絡先」など、法律で定められた情報を欠かさず記載しなければなりません。
また、PCB廃棄物は一般産業廃棄物や他の特別管理産業廃棄物と混ざらないよう、仕切りや区画を設けて物理的に完全に隔離することが必須です。
ルール3:事務処理と届出の確実な実行
物理的な対策と並行して、事務処理も法令遵守の重要な要素です。
PCB特措法に基づき、事業者は毎年度、PCB廃棄物の保管量や処理状況を都道府県知事等に正確に報告する「保管及び処分の状況の届出」を期限内に行う義務があります。
会社が相続、合併、分割などで事業者の地位を承継した場合、30日以内にその旨を行政に届け出なければなりません。これらの届出義務を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、罰金刑が科せられます。
さらに、処理委託を除き、いかなる場合もPCB廃棄物を第三者に譲渡したり、譲り受けたりすることは厳しく禁止されており、これに違反すると重い罰則が適用されます。
PCB廃棄物の事務処理義務違反の罰則事例3選

PCB廃棄物の保管に関して、違反行為が発覚した際には、以下のような罰則が科されます
①保管・処分状況の未届出・虚偽届出: 6月以下の懲役または50万円以下の罰金
②譲渡・譲受け制限違反: 3年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、またはこれらが併科
③事業承継時の未届出・虚偽届出: 30万円以下の罰金
PCB廃棄物処理はオルビー環境にご相談ください

今回の記事で紹介した5つのNG例に一つでも該当する場合、すでに行政処分リスクにさらされている可能性があります。早急に管理方法を見直し、改善しましょう。
オルビー環境は、大阪・関西を中心に日本全国エリアで、煩雑な行政届出書類の作成サポートから、安全な搬出、環境大臣認定施設への確実な処分まで、ワンストップで対応しています。
高額になりがちなPCB廃棄物の処理費用についても、国や自治体の助成金制度の活用や、ルート回収での運搬費の削減など、少しでも安く処理できるように工夫しております。
低濃度PCBの処理期限は目前です。リスクを最小限に抑え、適正処理を確実に行うために、まずはお気軽にオルビー環境へご相談ください。



