クリーンエネルギーの裏側にある「レアメタル」の重要性
太陽光発電には、地球上に限られた量しか存在しない「レアメタル」という希少資源が密接に関わっており、太陽光パネルの性能を飛躍的に向上させる一方で、その希少性と採掘・精製に伴う環境負荷、そして将来的な枯渇リスクという課題を抱えています。
「太陽光パネルにはどんなレアメタルが使われているのか?」「なぜこれほど重要なのか?」「そして、これらの希少資源をどう守り、持続可能な形で利用していくのか?」と気になっている方も多いのではないでしょうか?
今回の記事では、このような疑問に対し、太陽光パネルとレアメタルの関係性を深掘りし、その種類、機能、そして未来に向けたリサイクル技術の動向について詳しく解説します。
レアメタルとは何か?希少性が持つ意味

レアメタルとは、地球上に存在する量が少なく、採掘や精製が困難であるため、経済的・技術的に供給が安定しにくい非鉄金属の総称です。具体的には、リチウム、コバルト、ニッケル、ガリウム、インジウム、セレン、ネオジムなどが挙げられます。
これに対し、鉄や銅のように大量に産出され、一般的に広く利用されている金属は「ベースメタル」と呼ばれます。金や銀、プラチナのように宝飾品としての価値も高いものは「貴金属」に分類されます。レアメタルは、ベースメタルや貴金属とは異なる独自の特性を持ち、現代社会の多岐にわたるハイテク産業を支える不可欠な素材となっています。
その希少性は、埋蔵量が少ないだけでなく、特定の地域に偏在していること、不純物が多く精製に高度な技術とコストがかかることにも起因します。そのため、国際情勢や特定の生産国の動向によって供給が不安定になるリスクを常に抱えています。
レアメタルはどんなところで使われている?

レアメタルは、私たちの身の回りのあらゆる製品や技術に活用されています。例えば、電気自動車のバッテリーにはリチウムやコバルト、スマートフォンやパソコンの電子部品にはインジウムやガリウムが不可欠です。また、医療分野では診断装置に、環境技術では触媒として、その特性が活かされています。
特に近年、地球温暖化対策としての再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、太陽光発電や風力発電といった設備にもレアメタルが不可欠な材料として使用されるようになりました。これらの金属が持つ優れた電気伝導性、光吸収性、磁性などの特性が、最先端技術の性能向上に貢献しています。
太陽光パネルとレアメタルの密接な関係

太陽光パネルは様々な材料で構成されていますが、その中でレアメタルが特に重要な役割を果たすのが、光を電気に変換する「セル」の部分です。
化合物系太陽光パネルとレアメタルの役割
太陽光パネルは大きく分けて「シリコン系」と「化合物系」に分類されます。このうち、レアメタルが主要な材料として使用されるのは化合物系太陽光パネルです。化合物系パネルは、薄膜で製造できるため、柔軟性やデザイン性に優れ、また影の影響を受けにくいといった特徴があります。
化合物系太陽光パネルの代表例が、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)を主な原料とする「CIGS(またはCIS)系太陽光パネル」です。これらのレアメタルは、太陽光を効率的に吸収し、高い変換効率で電気エネルギーに変換するために不可欠な半導体材料として機能します。
例えば、インジウムはバンドギャップを調整し、太陽光の幅広いスペクトルを吸収する能力を高めます。ガリウムは熱安定性を向上させ、セレンは結晶構造の形成に寄与し、高い光電変換効率を実現します。
CIGS系パネル以外にも、カドミウムとテルルを用いる「CdTe系」パネルなどがあり、これらにもレアメタルや重金属が含まれています。これらのパネルは高い性能を持つ一方で、使用される希少資源の制約や、カドミウムのような有害物質の管理が課題となります。
レアメタルが抱える3つの課題

レアメタルは、その優れた特性から太陽光パネルの性能向上に大きく貢献していますが、同時に大きな課題を抱えています。持続可能な社会を築く上で、これら3つの問題は避けて通れません。
課題1:深刻な資源枯渇リスク
最も深刻なのが資源枯渇リスクです。地球上のレアメタル埋蔵量には限りがあり、鉄や銅といったベースメタルのように大量生産・大量消費を続けることはできません。
世界の需要は増加の一途をたどっており、このままではいずれ供給が追い付かなくなる可能性があります。この希少性が、レアメタルの持続可能な利用を困難にしています。
課題2:サプライチェーンの不安定化
また、レアメタルの採掘や精製は、特定の国や地域に集中している傾向があります。例えば、多くのレアメタルは中国で生産されており、日本を含む多くの国は輸入に大きく依存しています。
これにより、特定の生産国の政情不安や輸出規制などが、世界的なサプライチェーンの不安定化に直結し、レアメタルの価格高騰や供給不足を引き起こすリスクがあります。
課題3:高い環境負荷
さらに、レアメタルの採掘・精製プロセスは、環境負荷が高いという問題も指摘されています。使用済みパネルからの適切な回収が行われなければ、貴重な資源が無駄になるだけでなく、有害物質の排出による環境汚染を引き起こす可能性も否定できません。
これらの課題を解決し、持続可能な太陽光発電システムを構築するためには、レアメタルの使用量を抑える技術開発と、効率的なリサイクルシステムの確立が喫緊の課題となっています。
太陽光パネルに含まれるレアメタルのリサイクル事例

太陽光パネルからのレアメタル回収は、その多層構造や素材の強固な接着により技術的な難易度が高いとされてきました。しかし、近年、様々な研究機関や企業が革新的な回収技術の開発に成功しています。
事例1:宮崎県産業振興機構
宮崎県産業振興機構によるCIS型パネルからのレアメタル剥離回収 公益財団法人宮崎県産業振興機構では、CIS型太陽光発電パネルの規格外品を対象に、レアメタル(インジウム、ガリウム、セレン)と基板ガラスの回収研究を実施しました。
その結果、レアメタルを基板から効率的に剥離させ、ひとつの集合体として取り出すことに成功しました。この技術は、今後大量に廃棄されると予想されるCIS型パネルのリサイクルに大きく貢献する可能性を秘めており、レアメタルの安定供給への貢献が期待されています。
※情報参照元:公益財団法人宮崎県産業振興機構「平成24年度:CIS型太陽光発電パネルの製造工程規格外品からのレアメタル回収及び基板ガラスの再利用技術開発」(https://www.mepo.or.jp/shienjirei/541.html)
事例2:芝浦工業大学/株式会社ケー・エフ・シー
微生物を活用したセレン回収の挑戦(芝浦工業大学・ケー・エフ・シー) 芝浦工業大学と株式会社ケー・エフ・シーは、使用済みCIGS系太陽光パネルから、環境に優しい微生物を利用してレアメタルであるセレンを回収する画期的な技術開発に成功しました。
セレンは半導体材料として重要である一方、セレン酸や亜セレン酸には毒性があり、排水基準の対象にもなる有害物質です。
この研究では、セレン酸還元微生物「Stutzerimonas stutzeri NT-I」を用いることで、CIGSを溶解後、中和された溶液からセレンを浄化・回収・再資源化するプロセスを世界で初めて確立しました。これは、有害物質の除去と希少資源の回収を両立する、環境負荷の低いリサイクル方法として注目されています。
※情報参照元:世界初、微生物を利用して廃太陽電池からレアメタルの回収に成功〜セレン酸還元微生物を用いて廃太陽光パネルからレアメタル「セレン」の回収再資源化を実現〜(https://www.shibaura-it.ac.jp/headline/detail/20251006-7070-51.html)
オルビー環境が拓く太陽光パネルとレアメタルの持続可能な未来

太陽光発電は、地球温暖化対策に不可欠なクリーンエネルギーですが、その効率を支えるレアメタルは、希少性と生産地の偏り、そして環境負荷という課題を抱えています。
持続可能な社会を実現するためには、レアメタルを無駄にせず、その価値を最大限に活かすリサイクル技術の確立と普及が喫緊の課題です。
オルビー環境は、関西エリア(大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山)を中心に、全国のお客様の太陽光パネル廃棄処理をサポートしております。使用済み太陽光パネルの適正処理やレアメタル回収・リサイクルでお困りの際は、ぜひオルビー環境へお気軽にご相談ください。



