太陽光パネルの「劣化」は避けられない?長期運用の課題
2012年FIT制度導入以降、多くの太陽光発電所が稼働開始から10年以上の節目を迎え、機器の経年劣化が顕著になっています。大規模発電所では、パネル数が多い分、劣化や故障のリスクも膨大です。
太陽光パネルの劣化は、単に発電量が減るだけでなく、ホットスポットの発生やクラスタ故障、最悪の場合は火災リスクに直結します。
今回の記事では、太陽光パネルが劣化・故障する具体的な原因と事例、劣化がシステムに与える影響、そして長期にわたる安定運用と収益確保のために事業者が講じるべき具体的な対策を解説します。
太陽光パネルの劣化・故障がシステムにもたらす影響

太陽光パネルは乾電池と同じように直列と並列の組み合わせで接続されています。そのため、直列接続されているパネル列(ストリング)のうち、たった1枚のパネルが故障し発電が停止するだけで、その列全体が発電不可能になり、大きな出力低下を招くリスクがあります。
全体の出力量が大規模なメガソーラーなどでは、一時的な発電量の減少を早期に発見しにくく、気が付いた時には相当量の故障パネルを抱え、発電の機会損失につながっているケースも少なくありません。故障したパネルは、規定値より発電量が減少するか、完全になくなってしまいます。
太陽光パネルの異常発熱で起こり得るリスク3選

パネルの劣化は、異常発熱という重大な安全リスクを引き起こします。これに伴う3つのリスクの発生が考えられます。
リスク1:ホットスポットの発生
何らかの要因(汚れ、影、ひび割れなど)でセルの電気抵抗が局所的に大きくなると、周辺のセルからの電流が抵抗の大きい部分に流れ込むことで熱エネルギーに変わり、100℃を超える異常発熱(ホットスポット)が発生します。
リスク2:火災の発生
ホットスポットが発生している箇所はパネル自体が発火し、焼損するおそれがあります。パネルの発火を免れたとしても、ホットスポットに溜まった枯葉やゴミ等が接触すると、着火して施設全体の火災を招きかねない大変危険な状況となります。
リスク3:クラスタ故障
不具合によって出力が低下したセルが生じた結果、バイパスダイオードが働き、パネルの部分的なセルの組(クラスタ)が丸ごと発電を停止している状態です。これも発電量が落ちるだけでなく、異常発熱を招く要因となります。
故障パネルは交換となり、費用が割高に

太陽光パネルは、故障個所の発電セル単位で分解交換することは技術的に不可能です。そのため、原則としてパネル1枚単位でまるごと交換することになります。
この交換費用は、初回設置時のように大量発注による割引が効かないため、設置時の1枚単価より割高になる傾向があります。
太陽光パネルは競争が激しく毎年のように仕様変更されているため、メンテナンス用のパネルが小ロットでの受注生産扱いになってしまうことも費用を高騰させる要因となります。
太陽光パネルの劣化・故障を引き起こす主な原因と事例

太陽光パネルの劣化や故障は、複合的な要因によって引き起こされます。外的要因、システムの内的要因、そして施工時の品質問題が挙げられます。
外的要因:物理的な損傷と環境ストレス
飛来物との衝突による割れ
太陽光パネルの表面は強化ガラスで覆われていますが、台風などの強風時に飛ばされてくる小石や木の枝、あるいは野鳥が石を落とすといった外的要因による点での瞬間的な荷重には弱い傾向があります。定期的な外観の目視チェックが不可欠です。
裏側からの破損(野立て特有のリスク)
野立ての太陽光発電設備では、地盤から樹木や竹などが育ち、パネルの裏側から突き破ってしまう事例があります。パネルの裏側は表面ガラスに比べて衝撃に弱いため、雑草処理や下草刈りを怠ると故障の原因となります。
汚れや影の発生
鳥のフンや落ち葉、黄砂などによる汚れがパネル表面に局所的な影を作り、それがホットスポットを発生させて故障を引き起こすケースがあります。
内的要因:システムと材料の経年変化
経年劣化
太陽光パネルは、紫外線、風雨、昼夜の温度変化といった過酷な屋外環境に長期間晒され続けることで、内部の素材が劣化し、性能が低下します。一般的な劣化率は年間0.25%〜1%程度と言われています。
システムの故障
パネル自体の劣化に加え、電力変換を担うパワーコンディショナー(パワコン)のフィルタ目詰まりによる冷却不良や、鉄骨架台のサビによる強度低下なども、発電システム全体の連鎖的な故障要因となります。
施工・輸送時の品質問題
輸送時のトラブル
パネル輸送時や積み上げ時の衝撃、たわみなどが原因で、設置前から目に見えない「マイクロクラック(小さなひび割れ)」が発生していることがあります。この微細なヒビが、長期間の使用の中で内部の腐食を招き、故障へと繋がるケースがあります。
施工不良
ボルトの締め付け不足によるパネルのぐらつきや落下、架台組み立て時の金具取り付けミス、配線接続時の端子台の破損など、施工業者のミスによる初期的な品質不良が、数年後の故障や火災リスクを引き起こす原因となります。
特に、適切な造成や地盤補強対策がなされていない大規模設備では、地盤沈下によるパネルのたわみが発生し、ヒビ割れや漏電による火災を引き起こす事例も報告されています。
安定運用と収益確保のための故障早期発見・対処法

故障による発電ロスや火災リスクを防ぎ、安定した発電所の運営を継続するためには、異常を早期に発見し、迅速に対処する体制が不可欠です。
対処法1:日常的なモニタリングと目視チェックの徹底
発電量のモニタリング
毎日の発電量をモニタリングシステムでチェックし、発電量の不自然な低下を早期に発見することが最も重要です。発電量がシミュレーション値や過去のデータと比較して落ち込んでいる場合は、異常発生のサインです。
外観の目視チェック
雑草処理や清掃の際に、パネル表面に割れやひび割れがないか、汚れ(鳥のフンなど)が局所的にないか、架台や配線にサビ、腐食などがないかを日常的にチェックすることが、異常の早期発見に繋がります。
対処法2:専門技術を用いた精密点検の活用
定期点検の実施
発電設備は郊外の遠隔地に立地することが多いため、専門の保守サービス業者(O&M業者)と契約し、現地の定期点検を依頼することが最も確実です。
ドローンによる赤外線点検
赤外線カメラを搭載したドローンでパネルを撮影し、異常箇所を特定する技術が実用化されています。ホットスポットやクラスタ異常などによる温度異常を画像解析により検知し、故障位置を正確に特定することで、迅速な交換作業に繋げることができます。
対処法3:迅速な点検と交換
迅速な対応の重要性
異常を検知した場合は、「このくらいなら大丈夫」と放置せず、迅速に専門業者に連絡し、緊急駆け付け対応を依頼することが重要です。故障箇所を放置すると、漏電や火災といった甚大なリスクに繋がる可能性があります。
交換と費用対効果
故障パネルは修理が不可能であるため、パネル1枚単位での交換が必要です。交換費用は割高になりますが、迅速に交換することで発電機会の損失を防ぐことが、最終的な収益確保に繋がります。
太陽光パネルの安定した発電と安全な運用を継続して行くためには、これらの定期的な設備点検とメンテナンスをしっかりと実施する必要があります。
太陽光パネルのリユース・リサイクルはオルビー環境へ

太陽光発電設備が寿命を迎えた後には、これらのパネルを産業廃棄物として適正に処理しなければなりません。その際、環境負荷を最小限に抑え、排出事業者の法的・社会的責任を果たすためには、信頼できるリサイクル・処理業者との連携が不可欠です。
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