吸水性と速乾性に優れた珪藻土(けいそうど)製品、特にバスマットやコースターは、私たちの生活を快適にしてくれる人気商品です。しかし、2020年から2021年にかけて、これらの製品から有害物質であるアスベスト(石綿)が検出されたというニュースは、多くの消費者に大きな不安を与えました。
「あの時買ったマットは大丈夫だろうか?」「もし今も自宅にあったらどうすべきか?」—そうした疑問や懸念は、問題発覚から数年が経過した現在でも根強く残っています。
今回の記事では、珪藻土製品へのアスベスト混入問題の経緯を振り返りつつ、現在の市場の安全性、日常使用におけるリスクの有無、そして最も重要な正しい製品の見分け方と処分方法について、詳しく解説します。
珪藻土製品に大規模リコール!問題の経緯と現在の状況

2020年11月、市場に流通していた一部の珪藻土バスマットやコースターなどの製品から、日本の法規制で定める基準値(重量の0.1%)を超えるアスベストが検出されたことが明らかになりました。
この報道をきっかけに、大手ホームセンターのカインズや家具販売店のニトリをはじめ、多くの小売業者や通販サイトで同様の混入問題が次々と発覚しました。特にニトリでは355万点という大規模なリコールに発展し、その社会的影響は非常に大きなものとなりました。
厚生労働省は事態を重く見て、関連業界に対して製品の自主点検と販売・使用の中止を要請し、対象製品の全数回収を指導。流通品に対するサンプルの分析調査も強化されました。
問題の根本的な原因はどこにあったか?
この問題で混入が確認された珪藻土製品のほとんどは、中国を中心とした海外で製造・輸入されたものでした。
そもそも、天然素材である珪藻土自体にアスベストは含まれません。 珪藻土は、海や湖の底に堆積した珪藻の化石からなる自然素材です。
にもかかわらずアスベストが混入した原因は、主に以下の点が背景にあると推定されています。
原因1:製造管理の問題
一部の海外工場において、安価な接着剤や補強材としてアスベストが意図的あるいは誤って使用された可能性があります。特にアスベストの使用規制が日本ほど厳しくない地域で製造されたことが影響しました。
原因2:輸入時のチェック体制の不備
輸入業者が、製造元に対しアスベスト不使用の確認を徹底できていなかったため、規制値を超える製品が国内市場に流通してしまいました。
今販売中の珪藻土製品は安全?

2020年の問題を踏まえ、国は規制を強化しました。現在は、製品を輸入する際、事業者はアスベストに関する分析結果報告などを取得し、基準値を超えていないことを証明することが義務付けられています。
この厳格な法規制と、大手販売店による徹底的な回収とチェック体制の見直しにより、現在、国内で正規に流通している珪藻土製品の安全性は非常に高くなっていると判断できます。
珪藻土製品の健康への影響
珪藻土製品にアスベストが含まれていたという事実から、「健康への影響は?」と不安になるのは当然です。
アスベストの危険性は、その繊維が空気中に飛散し、人体に吸入されることによって生じます。肺に入り込んだアスベスト繊維が、長期間を経て肺がんや悪性中皮腫などの重篤な健康被害を引き起こすのです。
しかし、アスベストが混入した珪藻土バスマットやコースターであっても、一般的な使い方をしている限り、アスベストが空気中に飛散するおそれはほとんどありません。 珪藻土は固形化されており、アスベスト繊維は製品内部に固定されている状態にあるためです。
よって、過去に購入した製品がリコール対象品であったとしても、通常の使用でただちに健康被害が発生するリスクは極めて低いと考えられます。
アスベスト含有珪藻土マットで絶対にしてはいけない行為
日常の使用は安全であっても、以下の行為はアスベスト繊維を飛散させるリスクがあるため、絶対に行ってはいけません。
禁止行為1:表面をやすりなどで削る
吸水力を回復させるために表面を削ることを推奨する製品がありますが、リコール対象の可能性がある製品を削ると、内部の繊維がむき出しになり、空気中に飛散する危険性が生じます。
禁止行為2:高い場所から落とすなどして製品を割る・砕く
破損によって製品内部のアスベスト繊維が露出したり、粉じんとなって飛散したりする可能性があります。
珪藻土マットのアスベスト含有の見分け方

「自宅にある珪藻土製品がリコール対象かどうか分からない」という場合は、以下の手順で安全性を確認してください。
まず前提として、アスベスト繊維は非常に微細(髪の毛の五千分の一程度)なため、一般消費者が目視で混入の有無を判断することは不可能です。見た目の色や質感、価格などで判断することは絶対にできません。
見分け方1:原則は販売店・商品名による確認が最優先
アスベスト混入が発覚した製品は、販売元がその後の回収責任を負っているため、販売店やメーカーが公表しているリコール情報を確認することが、最も確実で安全な見分け方です。
大手販売店のリコール情報を確認
ニトリやカインズなど、大手販売店やメーカーのウェブサイトでは、回収対象となる商品の品番や見分け方(色、サイズなど)が詳しく公表されています。購入時期が2020年前後である場合は、必ずこれらをチェックしましょう。
レシートや購入記録を確認
当時の購入記録(レシート、通販サイトの履歴など)から商品名と販売元を特定し、その販売元の相談窓口に問い合わせてください。
見分け方2:専門機関による分析調査
リコール対象ではないものの、購入元や商品名が一切分からず、どうしても不安が残る場合は、専門機関によるアスベスト分析調査が必要です。
アスベストの有無を正確に判別するには、X線回折分析法や偏光顕微鏡法など、特定のJIS規格に基づいた専門的な分析が不可欠です。
しかし、一般消費者が私的に分析を依頼するには費用と手間がかかります。そのため、まずはお住まいの自治体(環境担当窓口など)に相談し、適切な対応方法を確認することをおすすめします。
アスベスト含有の疑いがある珪藻土製品の正しい処分方法
もしご自宅の珪藻土製品がリコール対象品であると判明した場合、または対象品かどうかが判然としない場合は、以下の手順に従って絶対に安全な方法で処分してください。
一般ごみとしての自己判断での廃棄は厳禁
アスベスト含有の可能性がある製品を、燃えないゴミ、粗大ごみ、または資源ごみとして、自治体の収集に出すことは厳禁です。
これは、ごみ収集や処理の過程で製品が破損し、アスベスト繊維が飛散して作業員や環境に悪影響を及ぼすリスクがあるためです。
原則!販売店・メーカーの自主回収制度を利用
最も正しく安全な処分方法は、製品の購入元(販売店やメーカー)が実施している自主回収制度を利用することです。
まずは販売元のウェブサイトやカスタマーサービスに連絡し、回収方法(店舗持ち込み、郵送、訪問回収など)の指示に従ってください。販売者が責任をもって、安全な方法で回収・廃棄してくれます。
回収を待つ間は、製品が破損しないよう注意し、厚手のビニール袋等に入れ、テープでしっかりと封をして、人やペットが触れない場所に保管してください。すでに破損している場合も同様に厳重に梱包してください。
アスベスト対策は「オルビー環境」へお任せ

珪藻土製品へのアスベスト混入問題は、消費者への不安を一時的に高めましたが、現在では法令改正と市場の厳格化により、安全性が確保されています。
過去の製品を不安に感じている方は、この記事で紹介した手順に従い、まずは販売元のリコール情報を確認することから始めてください。もし、リコール対象外の製品でも、材質の不安から正確な分析が必要になった場合は、専門的な知識と技術が必要です。
アスベストに関する調査は、そのすべてが「正確な分析」から始まります。
オルビー環境は、アスベスト分析を専門とする機関として、正確な分析結果を提供することで、企業や個人の安全対策、および法令遵守をサポートしています。
大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山といった関西全域を中心に、私たちは迅速かつ信頼性の高いサービスを提供しています。「最短1営業日での結果報告」、「1検体12,000円からの定性分析」など、高い専門性を兼ね備えながらも、お客様のニーズに合わせた柔軟な対応が可能です。2024年の分析実績は10,000件以上にのぼり、お客様の課題解決に貢献しています。
建築材料や製品のアスベスト含有に関する不安、確実な分析が必要な場合は、経験豊富なオルビー環境にどうぞお気軽にご相談ください。