アスベストはいつまで使われていた?
かつて「魔法の鉱物」として、耐熱性や耐久性の高さから建材をはじめとするさまざまな製品に使用されていたアスベスト。しかし、その健康への悪影響が明らかになるにつれ、アスベストの使用は規制され、現在では完全に禁止されています。
とはいえ、規制が始まる以前に建てられた建物には、今もなおアスベストが残っている可能性があるため、自社の建築物は大丈夫?と不安になっている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回の記事では、アスベスト規制の歴史や使用禁止のタイミング、どの年代の建築物が調査の対象となるか、さらに具体的な使用箇所についてわかりやすく解説します。
アスベストとは?
アスベスト(石綿)は、天然に産出される鉱物繊維の一種です。その特徴は、耐熱性や耐久性、断熱性、さらには腐食に強い性質を持つ点にあります。これらの特性から、アスベストは建築資材や断熱材、家庭用製品など幅広い用途で利用されてきました。
しかし、アスベストは極めて細い繊維で構成されており、飛散した繊維を吸い込むことで肺がんや悪性中皮腫、石綿肺といった深刻な健康被害を引き起こすことがわかっています。
その危険性が認識されるようになったのは20世紀後半からで、世界各国で使用規制が進められました。日本でもアスベストの使用は段階的に規制され、現在では全面的に禁止されています。
アスベストはいつから禁止?段階的な規制の歴史
日本におけるアスベスト規制の歴史は段階的に進みました。アスベスト規制に大きな変更があったのは4回です。
規制時期1:1975年
1975年の規制で、5%以上のアスベストを含む吹付け材の使用が原則禁止されました。この規制は、吹付け材が特に飛散性が高く、健康被害を及ぼしやすいことがわかったことによるものです。
規制時期2:1995年
1995年の規制で、1%以上のアスベストを含む吹付け材の使用が原則禁止されました。より厳しい基準が設けられ、規制対象が拡大されました。
規制時期3:2004年
2004年の規制で、10品目のアスベスト含有建材(断熱材、耐火被覆材など)の製造、輸入、使用が禁止されました。この段階で、アスベストの規制範囲がさらに広がりました。
規制時期4:2006年
2006年の規制で、アスベスト含有量が0.1%以上のすべての製品の製造、輸入、使用が禁止されました。これにより、アスベストを含むすべての製品が完全に市場から排除されました。
何年以降の建築物ならアスベストが使われていない?
アスベストが完全に使用されなくなったのは2006年以降の建築物です。
具体的には、2006年9月1日に施行された「建築基準法施行令の改正」により、アスベスト含有量が0.1%以上のすべての建材の製造、輸入、使用が禁止されました。
そのため、2006年9月以降に建てられた建築物は基本的にアスベストが使用されていないとされています。
例外!全面禁止の2006年以降でもアスベスト含有の可能性はある
基本的には2006年以降の建築物にはアスベストが使われていませんが、例外もあります。以下の2点に注意しましょう。
例外1:在庫品の使用
2006年以降に建てられた建築物でも、2006年以前に製造されたアスベスト含有建材が施工現場で使用されている可能性も考えられるため、厳密には施工時期も確認する必要があります。
例外2:輸入品や特殊な製品
輸入品や特殊な製品では、規制が適用されていない場合があるため、疑わしい場合は事前調査を行うことが推奨されています。
アスベスト含有が発覚した際の対応3ステップ
自社で管理する建築物にアスベスト含有が発覚した際には、次の3ステップで対応しましょう。
ステップ1:専門業者による精密調査を依頼
アスベスト含有が疑われる場合、まずは専門資格を持つ調査業者に精密調査を依頼しなければいけません。目視調査やサンプル採取、成分分析を行い、含有量や飛散性を詳しく特定します。
調査結果は報告書としてまとめられ、労働基準監督署や自治体への提出が必要となる場合があり、この過程で建築物の使用状況に応じた安全対策を計画します。
ステップ2:安全対策を実施
アスベストが発見された場合、まずそのエリアを使用停止し、飛散防止のために隔離措置を講じる必要があります。特に、吹付けアスベストなどの飛散性が高い材料に関しては、迅速かつ適切な対応が求められます。
その後、状況に応じて最適な処理方法を選定します。完全にアスベストを取り除く「除去工法」、専用のコーティング剤を用いて飛散を防ぐ「封じ込め工法」、そして建材全体を覆い隠して飛散を防止する「囲い込み工法」の3つの方法があります。
ステップ3:除去・廃棄処理を実施
アスベストの除去や封じ込めは、専門資格を持つ業者に依頼し、安全基準に従って施工します。
その後、アスベストを含む廃棄物は「特別管理産業廃棄物」として、許可を持つ業者に処分を委託しなければいけません。最終的には専用の埋立地で処理されるため、最後まで法令を遵守した対応が不可欠です。
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